ーまずはお二人の自己紹介と会社のご紹介をお願いします。
奥澤 2023年11月に、株式会社ツクルバからco-baなどの運営も含む不動産企画プロデュース部が独立する形で、バ・アンド・コー株式会社となりました。co-ba(コーバ)は、2011年に「co-ba shibuya」からスタートし、(※現在は運営を譲渡)「あらゆるチャレンジを応援する」をコンセプトにしたシェアワークプレイスとして、直営・フランチャイズを合わせて全国21拠点に広がっています。「働く場」を軸に、多様な属性、領域の人が集い、互いのアイデアやスキルを共有することで新たなコラボレーションが生まれる場を目指しています。7番目の「co-ba ebisu」はその旗艦店として、2019年に開業しました。私個人としては、美大卒業後に異色ではあると思うのですが、不動産業界に飛び込み、運営や管理、企画などの分野で、振り返ると、常に人が活動する場づくりをしてきました。
黒川 カフェや飲食プロデュースを行う株式会社トランジットジェネラルオフィスの中の不動産事業として立ち上げた子会社が株式会社リアルゲイトです(現在はサイバーエージェントグループ)。2010年お台場に第一号案件として「the SOHO」をオープンしたのが始まりです。(※所有者変更に伴い、2015年3月に運営管理業務を終了)最初は運営委託事業からスタートし、現在では自らが事業主として展開している施設がほとんどです。
私は入社6年目になるのですが、当時はまだプロジェクト数も30棟程度で社員もが30名くらいの規模の会社でしたが、現在はプロジェクト数も100棟ほどに増え、社員数も100名くらいになりました。さまざまな物件がある中で、恵比寿ガーデンプレイス内のワークプレイスとして企画をした「PORTAL POINT Ebisu」は企画当初から携わっていることもあり、思い入れの強い物件です。
ーお二人は同業ですが、面識やそれぞれのシェアワークプレイスを訪れたことはあるのでしょうか?
黒川 実はお邪魔させていただいたのは初めてです。開業が同じ2019年だったこともあって、もちろん意識はしていましたので、このような形でお伺いでき、お話しさせていただけるのが光栄です。
奥澤 同じくです。やはり他社との差別化は意識しているのでコンセプトを考える上でたくさん他社のリサーチもしましたが、同じ恵比寿というまちで同じ時期に開業された「PORTAL POINT Ebisu」には特別な想いを持っていたので、お話しできて嬉しいです。
ー「PORTAL POINT Ebisu」「co-ba ebisu」それぞれどのように始まったのか、またその想いを聞かせてください。
黒川 恵比寿ガーデンプレイスを運営するサッポロ不動産開発さんから、「ガーデンプレイスが25周年を迎えるにあたり、新たな価値を見出したい。働き方改革の中で、タワー棟に入居されているワーカー以外の方にも利用していただきたい。また、地域住民も巻き込んだ施設づくりをしていきたい」というお話をいただき、リアルゲイトとして何ができるかを考えました。我々は、創業当時から“場づくり”をしてきましたので、それをガーデンプレイスの中でも実現できるのではないかと考え、プロジェクトとしてスタートしました。
奥澤 「co-ba」というブランドで、直営では渋谷区に2拠点、フランチャイズで全国に19拠点がございますが、施設ごとにその時代やニーズに先駆けたオーダーメイドで作っており、コンセプトも異なります。2011年に開業した最初の「co-ba shibuya」はオープン当時の社会背景として、リーマンショックや東日本大震災などの影響もあり、働き方が少しずつ変わってきている時代でした。多様なスキルや価値観、事業を展開している人たちが出会うことで新しいことが生まれる、ということを大切にしていたのですが、なかでも起業家や起業間近の方に使っていただくケースが増えていきました。
その後、もっと幅広い方々に、新たなコンセプトで展開したいと考えていたところ、この恵比寿の開発に巡り合わせがあり、コンペを経て「co-ba ebisu」を企画・運営できることとなりました。この建物は日本郵便株式会社の社員寮としてもともとこの辺りに古くから残っていましたが、老朽化もあり、複合型賃貸マンションとしての再開発が計画されました。日本郵便さんの想いとして、単なる賃貸物件ではなくこの街に貢献できるような施設にしたいが、どうやって溶け込んでいくかという部分を課題とされていました。1階と2階を職住近接のワークプレイスにして、ワーカーを取り込むというコンセプトが決まった上でコンペがスタートしています。私たちは事業主のディベロッパーからお声がけをいただいたご縁で、ワークスペースの企画・運営を担うこととなりました。
ーどういった方々が会員として利用されているか教えてください。
奥澤 「co-ba ebisu」では、「働き方解放区」をコンセプトにしているのですが、その言葉の通り自由に働き方を選べる様々なプラン、個室をご用意しております。お一人から利用できるフリーアドレスプランだけでも4つのバリエーションがあり、フリーランスや起業準備中の方に人気があります。個室も4名〜30名ほどの規模まで多様なチームや企業単位でご利用いただくことができ、施設内で大きな区画にステップアップしたり、複数ご契約されることも多いです。また、特徴的なのが、アカウント共有制を導入している点です。1つのアカウントで複数名の利用者を登録できるため、複数人でのシェアも可能です。プロジェクトによってチーム人数が増減したり、必要に応じて支援者や協業先を招くなど柔軟な働き方を実践していただける仕組みになっています。
現在400名ほどのアカウント利用登録がありますが、コミュニティマネージャーをはじめとしたスタッフが入居者と日々コミュニケーションをとり、対面で直接お話を伺ったり、入居者限定slackなど、オンラインでも入居者内slackでやり取りをしたりすることで、入居者の皆さんをさまざまな方法でサポートするようにしています。
黒川 フリーアドレスのアカウントを他の方も使用できるのはすごいですね。いくつか追加で契約しておくことで、柔軟にチーム編成ができそうです。
奥澤 そうなんです。契約者が共に働く方と利用権限をシェアすることができるので、かなり自由度が高いと思います。スタートアップや組成直後のチームはフェーズによって人材の入れ替わりが多く、事業規模がある程度成長すると卒業されるケースもあって、彼らの成長に寄り添うにはどうすればいいかを考えてつくったシステムです。
黒川 その自由度の高さは大きなポイントですね。「PORTAL POINT Ebisu」では、個人会員の方にご利用いただくのはもちろんのこと、スペースが少し広いということもあって人数や企画のバリエーションもさまざまで、スタートアップやベンチャー企業の方も多く利用されています。
コワーキング会員の方は、開業当初、近隣にチラシをポスティングしたことなども影響して、地域住民の方が多くいらっしゃいます。もともとフリーランスで活動していた方もいればコロナ禍でリモートワークになったものの自宅だと働きづらいということでコワーキングスペースを探して来てくださった方もいます。現在も利用者数は伸びていて、こうした場所の必要性を感じます。区画を契約していただいている企業の方々には、新しいアイデアが生まれる場所としてご利用いただけています。
ー入居者同志の交流の場として、イベントなども行っていらっしゃるのでしょうか。
奥澤 開業してすぐにコロナ禍となり、なかなか人が集うリアルイベントなどを開催できずにいました。緊急事態宣言が明け、再び利用される方が増えてきたのですが、コロナ対策のルールの下、大人数で交流するイベントを開催するのが難しいという期間が長く続きました。しかし、コミュニティを持続させるため、オンラインコミュニティを促進するような企画を実施したり、少人数のイベントを開催する枠組みを作ったりしました。そこから、少人数だからこそ内容が濃く、深く交流ができる機会もあるんだ、という気付きもあり、そのスタイルが今も定着しています。企画については、事務局が入って提案することもありますが、入居者の皆さんご自身で企画されることも多いです。たとえば、テーマである「働き方解放区」になぞらえた、「日刊解放BAR」という企画。
入居者なら誰でもバーマスターになれて、自分の好きなテーマで10人くらいのイベントを開催していただける枠組みです。イベントによって、外部の方にもご参加いただけるものもあります。最近では、大人数のイベントもニーズが増えてきており、結果的にイベント開催のバリエーションが増えました。
黒川 「PORTAL POINT Ebisu」でもイベントは不定期開催しています。入居者同士の交流会を実施したり、恵比寿ガーデンプレイスという特徴を活かしてタワー棟に入居されている企業の方にもイベントで使っていただいたり、ガーデンプレイスのセンタープラザのイベントに紐づく形でも場所を提供しています。今年は恵比寿ガーデンプレイス開業30周年ということもあり、サッポロ不動産開発さんの主催でワーカー交流会を開催したのですが、多くの方が集まり、恵比寿ガーデンプレイスならではの良さを感じました。また、フリーデスクの入居者の方が利用する共有スペースもあるので、イベント開催時もそのスペースを最低限確保しつつ、利用者の声も聞きながらイベントを行っています。
ー「PORTAL POINT Ebisu」さんは、恵比寿ガーデンプレイスに遊びに行くたびに、スタイリッシュなラウンジで快適に仕事されている方を羨ましく感じますし、「co-ba ebisu」さんはまるで商店街のようにシームレスにオフィスが連なっていて、アットホームな雰囲気が魅力です。どんな風にシェアワークプレイスを利用したいのか、選択肢がいろいろあって利用者にとっても楽しい時代になりましたね。
奥澤 そうですよね。「co-ba ebisu」の場合はコミュニティマネージャーやスタッフが常駐して入居者の皆さんに積極的に関わるので、日常のちょっとした会話などのコミュニケーションやイベント時などの賑やかな雰囲気も含めて気に入ってくださっている方々が多いと感じています。自分にフィットした場や、価値観の合う人の近くで働きたいという潜在的なニーズがあるのではないかと思います。
黒川 そういった意味では我々はスタッフも常駐していないですし、人との距離感をキープしたい人には向いているかもしれません。恵比寿という街の特性上、クリエイティブ関係の方が多いので、若年層の多い渋谷やオフィスの多い丸の内エリアのワークスペースとは異なる雰囲気も魅力だと思います。
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今回の企画は、「ひらく庭」の記事作成のため恵比寿エリアでさまざまな取材を重ねるうち、「恵比寿にオフィスがあったらな」「ゆったり仕事ができるスペースがあったらな」と感じてシェアワークプレイスを探してみたことがきっかけでした。「PORTAL POINT Ebisu」は恵比寿在住の方も多く利用されているとあって、自宅とオフィスの間のような、仕事の合間に寛げるラグジュアリーなラウンジスペースがとても魅力的です。「co-ba ebisu」を訪れると常駐のスタッフさんがとてもフレンドリーに接してくれるので、誰かとコミュニケーションをとったり、情報交換をしたりしたい人にはぴったりだと感じました。それぞれの会社が恵比寿以外でも場づくりをされていますが、お二人のお話を聞いていると、「恵比寿っぽさ」が次第に浮かび上がってくるようでした。後編では、具体的な利用方法や今抱えている課題、これからの理想的なワークプレイスについてお伺いします。
「co-ba ebisu」
住所:東京都渋谷区恵比寿西1丁目33−6 1F/2F
お問い合わせ:03-5843-8620(受付時間:平日10:00〜19:00)
※詳細は公式サイトをご覧ください
「PORTAL POINT Ebisu」
住所:東京都渋谷区恵比寿4丁目20−4 ガーデンプレイスグラススクエアB1
お問い合わせ:03-6804-3944(受付時間:平日10:00〜19:00)
※詳細は公式サイトをご覧ください