時代の移り変わりとともに変化してきた3社のありようや、日々のサービスやホスピタリティに込められた想いを語っていただいた前編に引き続き、後編ではさらに、恵比寿の街との関わりや、これからの目指す姿や取り組みなどについてお話をお聞きしました。
Text & Edit : Atsumi Mizuno Photo : Eri Masuda(Lucent) Edit & Design : BAUM LTD.
Text & Edit : Atsumi Mizuno
Photo : Eri Masuda(Lucent)
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働く人にとっても、住んでいる人にとっても、訪れる人にとっても心地いい街
みなさんがいつも働いていらっしゃる恵比寿ガーデンプレイスとは、みなさんにとってどんな場所なのかをお聞かせください。
大郷: 私は生まれも育ちも東京で、恵比寿は特になじみが深く、この街の変化を直近で見てきました。それこそ子どもの頃は、町工場みたいなところがすごく多くて、恵比寿ガーデンプレイスもサッポロビール工場だったので今とは全然違いましたし、こんなに恵比寿が人気の街になるとは思ってもいませんでした。
それが、1994年の山の手線内の一大プロジェクトと言われて脚光を浴びていたあの頃からさらに30年が経って、2023年の今、恵比寿ガーデンプレイスがリニューアルを迎えているというのには、勝手に感無量です(笑)。リニューアルされた後は、これまで以上に集客力も上がっているなと感じていて、私自身も食の仕事をしているので、新しくなったB2Fの食品のフロア「LIFE」は足を踏み入れると、長時間見入ってしまうほど楽しくて! 音楽も好きなので、ブルーノートが入ったことも嬉しかったですし、そういう変化を楽しく見守っています。
岡田:私がロウリーズで働き始めた当時はまだ学生だったので、お店もそうですが、 恵比寿ガーデンプレイス自体が、高級な場所だと思っていました。初めてロウリーズにアルバイトの面接に来た時も、すごく場違いなところに来ちゃったと思ったぐらいです(笑)。
今は長く勤めるようになって、 3年前ぐらいに恵比寿に引っ越してきたので、このあたりで生活を送っています。なので、B2Fにスーパーが入って、仕事の休憩中に納豆とか、卵とか、トイレットペーパーを買いに行けるのが便利だなと、生活者目線でありがたく思っています。恵比寿は渋谷みたいにわちゃわちゃしすぎず 、でも若い人が入りやすいお店もあったり、ちょっと背伸びして行ってみたいなというお店もあったりするので、高級な印象もある一方で、すごくオールマイティな街というイメージになりました。
ロウリーズは東京だと赤坂と恵比寿に店舗がありますが、恵比寿は若い年代のカップルもいらっしゃれば、ビジネスのお客さまや、お子様連れのファミリー層もたくさんいらっしゃるので、そういったいろんなニーズやお客さまに普段から接する機会が多いのが、恵比寿の特徴だと感じています。実際に、恵比寿ガーデンプレイス内では、ご近所に住んでいる方が、犬の散歩をしながらベビーカーをひいていたりもしますし、私のように住んで働いている側からしても、すごく心地いいエリアです。
大郷:恵比寿が住みたい街の上位にランクインしていますが、街中のお店も、アットホームで良心的なお店がたくさん増えていますし、街を歩いていて楽しいのも恵比寿のいいところですよね。
バルガモトフ :私は1年前に東京に越してきたばかりですが、恵比寿はまず空気が綺麗ですし、ホテルの玄関を出てぱっと通りを見ても 落ち着いた雰囲気ですし、ほっとするんですよね。なんかちょっと仕事が上手くいってないなというムードの時も、ホテルの表に出て、建物の端から端を歩いてみるだけでも、気持ちを随分入れ替えることができて、爽快で気持ちいい場所だなと思っています。
あとは、通勤しているときに恵比寿東口に見える街灯がビールの形をしているのも素敵だなと。街のテーマが守られつつリニューアルもされていて、高級なものもあれば、フレンドリーな入りやすいお洒落なブティックもありますし、そういうのは本当に見ていて楽しいです。
そのほかにも、スーパーでは新鮮なフルーツも買えますし、 銀行に行かないといけないときはコンビニもすぐありますし、ぱっと見たら素敵なシャンデリアもあって、ツリーもあって。この小さな空間に、すべての生活プラスエキストラのものが揃っていて、ここに来て本当によかったなと楽しんでいます。
ホスピタリティのプロとしてなによりも大切なのは、丁寧なコミュニケーション
時代や街の変化とともに、恵比寿ガーデンプレイスもリニューアルを迎えましたが、これからさらにみなさまが目指していることや描いていることなどを教えてください。
バルガモトフ:遠方からお越しいただくお客さまをお出迎えして目一杯楽しんでいただくのはもちろんですが、地元の方たちにも愛していただけるようなサービスであったり 、ホテル内外のイベント、地域貢献にも取り組んでいきたいです。
東京に来る前にいた沖縄のホテルの話ですが、コロナ禍では完全休業をしなければいけない状況になって、飛行機も全部飛ばなくなってしまった時期がありました。そこで支えてくださったのが地元の方です。私はこれまで転々とホテルで勤めていますが、天災など何かが起こってしまった時、そのたびに地元の方の愛情を感じてきたので、ウェスティンホテル東京も地域に貢献し、地元の方たちからも親しみを持って、いつでも遊びに来ていただけるような施設にできたらいいなと思っています。
大郷:来年の30周年では、恵比寿ガーデンプレイスとしてはもちろん、お店としても周年ということで、記念になるようなイベントや企画品の発売などを今、一生懸命考えているところです。なので、街自体のイベントも、これを機会にたくさんの方にお店にお越しいただくこともすごく楽しみにしています。
岡田:ロウリーズは、ちょうど恵比寿に移転して10周年にあたる来年の4月でメニューを一新するので、いらっしゃるお客様の雰囲気も少し変わるのかなとワクワクしているところですし、今までずっといらっしゃってくださってきたお客様にも、これまでとは別の楽しみ方をしていただければ嬉しいなと思っています。
恵比寿ガーデンプレイスや街の変化とともに、未来を描き、三者三様に進化しているみなさまですが、日々ホスピタリティをアップデートしていくうえで心がけていることはあるのでしょうか。
岡田:スタッフには、研修動画を見てもらって、お店で実践するというトレーニングを取り入れていますが、そこまでやってもらうことは簡単です。その後がとても大事だと思っていて、しっかりスタッフを見て、成功したことに対しては褒める。教えっぱなしではなく、それぞれのレベルに合わせて、さらにワンアップ上のサービスを伝えるなどは、普段から行っています。
大郷:お客さまはもちろん、スタッフ間でも欠かせないのは、やはりコミュニケーション。仕事の時間内でのコミュニケーションも大切ですが、それ以外に、仕事終わりにスタッフ同士で食事に行けるように会社から補助金を出したりもしています。時間外でのコミュニケーションはちょっとしたことなのですが、その後の関係性に大きく影響することもあるので、そういう取り組みも積極的に取り入れています。
スタッフ全員がそういう制度を喜ぶかと言ったら、そういうわけにもいきませんが、でも、会社の制度として、そういうサポートがあるのはありがたいと思っています。
バルガモトフ:今の新入社員はコロナ禍で、外に行くな、触るな、喋るなといった人とのコミュニケーションを制限されたなかで学生時代を過ごしてきたので、積極的にお客さまと関わっていくというあり方に慣れず、しんどい思いもしていると思います。 でも、その中でも専門学校で学び、就職してきたスタッフたちですから、どれだけ開花させてあげられるかというのが、今の私たちの課題です。
トレーニング教材など、日々の引き継ぎの工夫などはもちろんですが、やっぱり、お客さまを楽しくお迎えして、楽しくお話をすることが欠かせません。たとえば、フロントカウンターにこもりっきりではなく、「トイレはどこですか?」と聞かれた時に、言葉で説明するよりも、直接案内していいんだよと伝えるなど、お客さまとコミュニケーションを取るきっかけをスタッフが持てるように気を配っています。機械のように接客をこなすのもいいですが、せっかくですから、お客さまとの縁を大切にしてもらいたい。スタッフがここから育っていって、たとえ違うホテルに行ったとしても、「ウェスティンホテル東京にも泊まりに来るけど、そこにいたあなたにも会いに行くよ」と言っていただけるような縁をつくってもらいたいと思っています。
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時代や街の変化とともに、進化してきた恵比寿ガーデンプレイス。長年にわたって、多くの人が訪れ親しまれる場は、そこで日々のホスピタリティを磨き続ける方々の丁寧なコミュニケーションの積み重ねによって成し遂げられているのだということを実感しました。2024年に30周年を迎える恵比寿ガーデンプレイスは、そこにあるお店や働く人々、行き交う街の人々とともに、さらに街にひらかれた、クリエイティブでホスピタリティに満ちた場へと変化を重ねていくのでしょうか。