開業30周年を前に、新たなメインターゲットを「ライフクリエイターズ(日々を自分らしく楽しみながら恵比寿のまちに暮らす・働く・訪れる人)」と定義し、その方々が集い、ゆるやかに交流する拠点「ライフクリエイターズ・リビング」をコンセプトに掲げ、大規模なリニューアルを進めています。
新たなステージへと動き出すなか、来る11月8日、商業の中心となる「センタープラザ」の全フロアがついにオープンします。地下2階から2階に全26店舗のテナントと、新しい働き方を提案するオフィスエリアが集まり、店舗やオフィスを構える企業同士が共創しながら、恵比寿の街に新しい価値をもたらすことが期待されています。
オープンに先立ち、今回は1階に新業態の店舗を出店する3社に集まっていただきました。後編は、実店舗の可能性を探るという前半と同様のテーマを扱いつつ、特に、「共創」という切り口からお話しをお伺いします。恵比寿という街にリアルな店舗を持つことで、どのようなコラボレーションの可能性が生まれるのか。また、そうしたコラボレーションの結果、どのような新しい暮らしのヒントが見えてくるのか。最終パートでは自由なアイデア出しも交えつつ、これらについて語っていただきます。
<プロフィール>
DCM株式会社(DCM DIY Place)
清家 茂
DX戦略統括部長 兼 新規事業開発部長
株式会社ゴールドウイン(PLAY EARTH KIDS)
小坂 琢磨
PLAY EARTH事業部マーケティンググループ、PLAY EARTH KIDSショップディレクション担当
プラス株式会社(ouchi GARAGE)
稲木 研二
ファニチャーカンパニー DI本部 eセールス事業部 事業部長
Text & Edit : Atsumi Nakazato Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI) Edit & Design : BAUM LTD.
Text & Edit : Atsumi Nakazato
Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)
Edit & Design : BAUM LTD.
恵比寿ガーデンプレイスという場所の特長を生かす
新業態の店舗が、個別の店舗ではなく、恵比寿ガーデンプレイスの商業棟に入ることに対して期待されていることはありますか?
清家 やっぱり相乗効果ですね。コラボレーションすることで、一つの店舗では出せない価値をお客様に提供できるところが期待としては一番大きいです。さまざまな強みを持つ店舗が一つの棟に集まることで、来訪されるお客様がより便利で快適な暮らしが実現できるようになり、恵比寿の街と自分の暮らしをもっと好きになっていただけることを期待しています。
コロナ禍でライフスタイルが変化し、暮らしと仕事がシームレスになる中、私たちがすべきことは、過ごし方の変化に合わせて、住まいを柔軟に変化させていくお手伝いだと思っています。それは、空間やものを大事に使うこととすごく親和性があって。古着をアップサイクルする取り組みを行うゴールドウインさんをはじめ、ものを大切に長く使い続けることを大事にされている店舗が集まることで、多様な価値を恵比寿の街や社会に還元できるのではないかと思っています。
小坂 僕たちが子連れで行くような郊外の大型商業施設は、普段の生活とは違う非日常な感覚があると思うんですが、恵比寿ガーデンプレイスに来られる方の多くは、この施設を非日常ではなく、暮らしの一部と捉えているんじゃないかと思っています。つまり、この場所に従来の大型商業施設とは違う心地よさを求めているんですよね。
教育環境のデジタル化が進む中、暮らしの延長線上にあるこの施設で、身の回りにどれだけ遊びや冒険が溢れているのかを子どもたちに示してあげることはとても意義のあることだと思うんです。それって、恵比寿ガーデンプレイスに出店するからこそできることであって、個別の店舗や他の商業施設では難しいだろうと思っています。
稲木 お二方のお話は共感することばかりなので、皆さんと一緒に新しい“すごしかた”を体現していくのはそれほど難しいことではないな、と今感じています。
私たちの店舗に来てくださるお客様は、最初から目的意識をお持ちの方が多いと思うんですが、商業施設の一角に店舗を構えることで、ほかのお店に行ったついでに寄っていただくという可能性が生まれます。お客様とのタッチポイントが増えることは、今回出店する大きなメリットであり、期待していることでもありますね。フラりと寄ってもらうなんていう発想は、オフィス家具屋にはなかったのでうれしい限りです。
暮らす・働く・遊ぶが融けあう共創拠点
オープンを記念して、ゴールドウインさんとDCMさんがコラボレーションしたオリジナルの木製遊具を期間限定で屋外に設置されるそうですね。この企画はどのようにして実現されたのでしょうか?
小坂 ゴールドウインでは、都市部で子どもたちが直感的に遊べる場所をつくろうと、これまでに「PLAY EARTH PARK」というイベントを六本木と富山で開催し、建築家たちがデザインした新しい遊具などを提案してきました。これを恵比寿ガーデンプレイスでもやりたい、という思いから、ここでしかできないこととして、同じフロアに出店されるDCMさんとコラボレーションし、新しい遊具を作れないかと考えたんです。
というのも、DCMさんが運営されているホームセンターに行ってみると、ありとあらゆるものが揃っていて。これってすごいことで、そこから遊びって絶対生まれるじゃないですか。そうした材料を新しい価値に変えて提案することが、僕らにとってもDCMさんにとっても、恵比寿の街で可能性を広げるきっかけになるんじゃないかと思いました。
清家 この企画のお話をいただいて、非常に賛同できるものだったので二つ返事でお引き受けしました。私たちは、この遊具に資材提供という形で関わっています。かねてから、特に都市部では木に触れる場がないと感じていて、子どもが遊びを通して木材に触れ合える場所を、私たちが提供していくべきだという思いがありました。
そこで、DCM DIY placeではキッズスペースとして、木製の球を使ったボールプールを設けています。今回はそのボールプールもゴールドウインさんが手がける遊具の一部として活用していただきます。より多くのお子さんに木の遊具の魅力を体感してもらいたいですね。
プラスさんは、恵比寿に集う多様なパートナーとの共創について、どのような構想や計画をお持ちですか?
稲木 ゴールドウインさんはじめ、恵比寿ガーデンプレイスに入居されている様々なテナント様と「WORK」×「○○」でイベントやワークショップなどを通して化学反応を起こせないかと考えています。
このほか、学生さんと一緒に、恵比寿の街を起点としたオフィス空間や家具を考える産学共同プロジェクトなども行なっていきたいですね。独自の世界観を持つ恵比寿ガーデンプレイスがある恵比寿の街は、渋谷区の中でもちょっと特殊だなと思っていて。そんな恵比寿の街のあり方をこれから探っていきたいですね。
また、先ほどのオリジナル遊具のお話を伺って、私たちもこれから子どもを巻き込むようなことができればいいなと思いました。このコラボ企画に混ぜていただけたら何ができたんだろうなと思いを馳せると同時に、ジェラシーも少し感じながら(笑)。こういう取り組みって楽しそうだなと改めて思いましたね。
小坂 ぜひ、今後は一緒にいろいろやっていきたいですね。
稲木 こちらこそ。PLAY EARTH KIDSさんの「地球と遊ぶ、地球で遊ぶ」というコンセプトを伺って、「と」と「で」でこれほどニュアンスが違うんだなと驚きました。日本人は“オフィスは仕事をする場所”という感覚があるので、オフィスに遊びの要素を加えようと思った時に、”オフィス「で」遊ぶ”と考えがちなんです。でも、”オフィス「と」遊ぶ”というと、働くと遊ぶがつながるような感覚が生まれますよね。これからは「オフィスと遊ぶ」をテーマに、遊びや暮らしを楽しむことをテーマとするお二方から斬新なアイデアをいただけることをひそかに期待しています。
これから恵比寿の街と共創していく中で、こんなことをやってみたい、こんなことができたらおもしろそうというアイデアがあれば教えてください。
稲木 子どもを中心とした取り組みはぜひやっていきたいです。自慢できるオフィスだと家族に見せたくなりますよね。オフィスを子どもに見せられるってすごく素敵なことですし、働いているお父さん、お母さんの姿を見る機会をつくることは、家族の幸せのあり方の一つの形だなと思うんです。子どもがオフィスを訪問できるイベントは、開かれた恵比寿カーデンプレイスだからこそ実現できると思っています。
小坂 子どもと遊べるオフィスがあったら、おもしろそうですね。コロナ禍に自宅でリモートで仕事をしていると、子どもから「早く遊んで」と言われたりして。そんな時、遊んであげられるのが一番いいんですけど、そもそも子どもが退屈しないような空間をつくるというのも一つの方法ですよね。子どもの仕事は遊びなので、子どもにとっての仕事と大人の仕事が共存するような空間が理想的だなと思います。
稲木 以前、オフィスづくりに関わった企業では、オフィスに保育施設が併設されていて、働く方々が子どもと一緒に出勤し、ランチを一緒にとって、仕事が終われば一緒に帰る、というサイクルができていました。これってすごく素敵だなと思ったんです。
恵比寿ガーデンプレイスでも、親御さんがここで働いている間に子どもが遊んで過ごせる場所があるとすごくいいですよね。例えば、夏休みに子どもと一緒に出社して、大人が働いている間、子どもはPLAY EARTH KIDSさんの自然体験プログラムに参加して、帰りはご飯を食べて一緒に帰る、なんていうのも考えられますよね。
清家 まさに新しい過ごし方ですね。私たちは子どもたちを巻き込むきっかけとして、まずは学校や幼稚園などとコラボレーションしてイベントができないかなと考えています。
以前、私も子どもを会社に連れて行ったことがあるんです。退屈するかなと思っていたら、回る椅子やホワイトボードを遊び道具にして1時間くらい平気で遊んでいたんですよね。大人の心配をよそに、オフィス空間を満喫していました(笑)。
小坂 そうやって何でも遊びに変えられるのは、子どもの本当にすごいところですよね。
清家 子どものために、と体裁を整えてあげなくても、大人が普段使っているものに自由に触れられるだけで、子どもにとっては十分新鮮なんですよね。キッズデイとか子どもタイムとして、施設の中を子どもたちだけで自由に探検してもらうイベントをやっても楽しそうですね。
稲木 お二方のお話を伺って、恵比寿ガーデンプレイスでは、子どもたちの創造力の育成を、アナログに着目して実現していきたいと思いました。子どもは何でも遊びにつなげられる絶対的なクリエイティビティを持っているので、それを誘発させるような空間を提供し、困ったときだけうまくサポートしてあげる、そのような場所があるといいのではないでしょうか。
例えば、私たちテナント店舗がそれぞれの得意分野を生かして、子どもたちが遊びにより深く入り込んでいけるような場をつくっていきたいですね。恵比寿ガーデンプレイスには余白のある空間がたくさんあるので、子どもを中心とした新しい過ごし方の可能性はどんどん広がっていきそうです。
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1994年に開業し、人々の生活のなかに溶け込んできた恵比寿ガーデンプレイス。センタープラザのリニューアルを機に、この空間に新たに集う出店企業やテナントは今、暮らす・働く・遊ぶ、といったそれぞれの役割を互いに生かしながら、多様な「すごしかた」の問い、探求、創造をはじめています。変化する時代とともに、未来に向けて動き出した新たなステージ。そこからは、複合施設におけるこれからの実店舗が持つ新しい役割と可能性が見えてきています。