: Asumi Nebashi
Photo : Ukyo Koreeda
Edit & Design : BAUM LTD.
八百屋さんのプライドをかけた絶品フルーツサンドが揃う「ダカフェ 恵比寿」
近年のフルーツサンドブームの火付け役として知られる愛知県岡崎市の「ダイワスーパー」が恵比寿にカフェ業態の店舗を出店したのは2020年のこと。「ダカフェ 恵比寿」は、恵比寿駅西口から歩いて8分ほど、駅前のにぎやかな商店街を抜けて脇道に入った通りに立地しています。
入り口の階段を上ると、開放的なテラス席が広がります。ホテルの1階に併設されたお店ということで、宿泊客と思しき外国人のお客さんが数人のんびりと平日の午前中の時間を過ごしていました。と思えば20代ほどの女性2人組がフルーツサンドの写真を撮っていたり、男女のカップルがシェアしながら食べていたり。ご近所の方なのか複数人でお茶をしている女性たちの姿もありました。ゆったりとした空気が流れるこの場所に集まりたくなる気持ち、よくわかります。
しかしながら、今回の目的はテイクアウト。テラスから店内に入ると、冷蔵ケースにお目当てのフルーツサンドが並んでいました。大ぶりにカットされたフルーツがどーんと主張するようにパンに挟まれているのがダカフェのフルーツサンドの特徴。10種類ほどのなかから、どれにしようかと選んでいるだけでなんだか楽しくなってきます。
この日店頭に並んでいたのは「黄桃」や「みかん」といった定番ものや、「たねなし柿」や「ナガノパープル」などの秋の味覚、それにネーミングが気になった「3年3組」。「3年3組は、キウイとバナナとみかんとそのときどきの季節のフルーツが入っています。社長が母校の小学校に講演で訪れた際、その学校の三年三組のみなさんからのリクエストを受けて作った商品なんです」。そう教えてくれたのは、「ダカフェ 恵比寿」のスタッフの市川海翔さんです。
フルーツサンドは愛知県の工場から毎日直送。人気商品なだけあって売り切れ必至かと思いきや、「一人でも多くのお客様に一つでも多くのフルーツサンドをお届けできるように、たくさんご用意するようにしています」(市川さん)というのが嬉しいところです。
〝八百屋のつくる本気のフルーツサンド〟をキャッチコピーとしているだけあって、「八百屋とうたっているからには半端な味のフルーツは出したくない。使っている素材の味は絶対に妥協しません」と市川さんの言葉にもその矜持がにじみます。フルーツのおいしさを引き立てるためにクリームもオリジナルで開発。試行錯誤を重ね、挟むフルーツによって使うクリームの種類を変えているのだとか。パンもしっとり感にこだわって製造業者に特注しているといいます。
ちなみに市川さんの推しのフルーツサンドはパイナップル。「いま市場にパイナップルが少なくなって高騰しているせいで最近出せなくなっているんですけど……」と残念そうに話してくれるのも、日々おいしい果物を提供しようと努力する〝八百屋さん〟ならでは。これからの季節だと、焼き芋や栗のサンドがおすすめだそうです。
市川さんは、もともと岡崎市にあるダカフェの本店に勤めており、1年ほど前に恵比寿に配属に。「愛知県民の目線で見ると、東京は場所によって集まる人の雰囲気が変わるイメージ。渋谷は若くて明るい方が多い、銀座は大人の落ち着いた方が多いというように。そんななかでどんなキャラクターの方でも来やすいのが恵比寿なんじゃないでしょうか。たとえばお年寄りの方でも若い女性でも、誰でもいられる場所だと感じています」。この1年、お客さんと接しながら肌で感じた恵比寿の街の魅力をそんなふうに話してくれました。
フルーツジュースやパフェなどのメニューも充実しているダカフェ。テイクアウトするならクレープも魅力的です。「バターシュガー」や「チョコバナナ」などのラインナップが揃いますが、最近お客さんによるクレープの人気投票を行ったところ、1位は意外にも「エビアボカド」だったのだとか! フルーツサンドだけでなく、常連さんに愛される通なメニューにもみなさんぜひ挑戦してみてほしいところです。
恵比寿の地で18年愛され続けてきた、たい焼きの名店「ひいらぎ」
続いて向かったのは恵比寿駅の反対側、東口方面です。駅から5分ほど歩いた居酒屋やラーメン店など飲食店がのれんを並べる一角。この場所で18年たい焼きを作り続けているのが「ひいらぎ」です。
恵比寿でたい焼きといえばここ、という有名店ですが、実は兵庫県姫路市のたい焼き屋さんが東京進出したお店。「社長が東京に店を出したいという思いがあったようです。姫路の田舎者にとって、恵比寿といえば、東京きってのグルメの聖地ですからね」。出店の経緯をそう話してくれたのは、店長の森下元気さん。
2006年のオープン以来愛され続けているたい焼きは、薄くてさっくりモチモチとした皮が特徴的。北海道産小豆のあんこがたっぷりと入っていて1個で得られる満足感がすごいのです。
おいしさの秘密は焼きの時間。「ほかの店では15分くらい焼くのが普通かと思いますが、うちの店では弱火で時間をかけてじっくり焼いています。弱火すぎて風が強いと消えてしまうこともあるくらい。店の看板には、30分かけて焼いていると書いているのですが、実はサバを読んでいて本当は1時間かけています。たい焼きを1時間かけて焼いているって書くとなんか怖いかなって(笑)」。
できあがるまでに時間はかかるけれど、お客さんには焼きたてを食べてほしい。そのために、1時間後に忙しくなるかどうか空気感やその日の気温などから長年の経験と勘で見極める。「毎日どのくらいの量を焼くかを調整しているので、一度にたくさん購入される方は電話で予約してもらえるとありがたいです」。
今回のピクニック用にたい焼きを数個買いましたが、映えるビジュアルに惹かれて「たいやきソフト」も注文。熱々のたい焼きでソフトクリームが溶けてしまうので、その場でいただきました。この組み合わせ、合わないはずがありません。「たい焼きソフト」は夏季メニューで「寒くなって売れなくなるまではやります」とのこと。秋冬には代わって、自慢のあんこを生かしたお汁粉や羊羹といった限定メニューが登場するそうです。
森下さんにお話を伺っている最中、お店のスタッフの方がたい焼きの皮のはみ出た部分をカットして、それを小袋に集めレジの横に置いているのを見ました。「あれは子どもに無料であげているんです。もともとは捨てるものなんですが、もったいないですから。ハネって呼んでるんですけど、近くの小学校の子たちが小腹が減ると『ハネください』ってやってきます。このへんの子ども達はハネで大きくなっているんです(笑)。その子たちが中高生くらいになると気を遣ってたい焼きを買ってくれるようになったりして。『おお!ついに買ってくれるようになったか』という感慨深さがありますね」。
森下さんはもともとは姫路のお店でアルバイトをしていたそうで、オープン2年目ごろから「ひいらぎ」で勤めています。「20歳になった頃で一人暮らしをしたいという話をしていて、社長に『なんだったら俺、東京に行けますよ』と言ったら『ちょうどよかった、スタッフが足りないから半年か1年くらい行ってきて』というやりとりがあって。気がついたら20年近くここにいます」。
気がつけば、たい焼きを焼きながら自然と恵比寿の子どもたちの成長も見守ってきた森下さん。「いつか有名人が『子どもの頃、ここでハネもらってたんですよ』って言ってくれるのを心待ちにしているんですよ。最近バイトで入った子が『僕小さいときここのハネもらっていたんです』って言ってくれたんですけど、そろそろ芸能人でもいるんじゃないかなって」と冗談混じりに話してくれました。地元に根付いたお店だからこその温かなエピソードにこちらの気持ちもほっこりしてきます。
秋風を感じながら「恵比寿公園」でのんびりと楽しむピクニック時間
今回のピクニック場所は、恵比寿公園。この公園には役所広司さんがトイレの清掃員を演じてカンヌ国際映画祭男優賞を受賞し話題になった映画『PERFECT DAYS』に登場したトイレも。近くに小学校があることもあり、都会の真ん中にある割には広々とした公園です。
まずは「ダカフェ 恵比寿」のフルーツサンドからいただきました。食べるのを楽しみにしていたのは、ほかではあまり見ない「たねなし柿」のフルーツサンド。柿がおいしいのはもちろん、周りのクリームはチーズのような風味で、これは大人もハマる味! さらに「ひいらぎ」のたい焼きをパクリ。さっくりした皮は噛み始めるともちもち感もあって長く恵比寿の地で愛され続けた理由がわかります。タイプは違えど地方から恵比寿に出店した2店を巡った今回の取材。あらゆる人やモノが集まる恵比寿という街の懐の深さを感じながら、のんびりしみじみと秋のピクニック気分を味わいました。
■ダカフェ 恵比寿
住所:東京都渋谷区恵比寿南3丁目11−25 プリンススマートイン恵比寿 1F
営業時間:6:30-18:00 (L.O17:00)
定休日:無休
080-7139-6610
※詳細は公式サイトをご覧ください
■ひいらぎ
住所:東京都渋谷区恵比寿1-4-1恵比寿アーバンハウス1F
営業時間:10:00~売り切れ次第
定休日:不定休
03-3473-7050
※詳細は公式サイトをご覧ください