今回編集部がセレクトしたのは、ドイツパンとコーヒーの専門店「フラウクルム」のドイツパンと、「EBISU BANH MI BAKERY」のバインミーです。
Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)
Edit & Design : BAUM LTD.
ヘルシーで栄養価の高いドイツパンがずらり!知る人ぞ知る人気店「フラウクルム」
恵比寿駅東口から広尾方面へ歩くこと7~8分、渋谷川近くの静かな路地にある「フラウクルム」は、本格的なドイツパンが味わえる知る人ぞ知る人気店です。知る人ぞ知る、というのは、この通りが大通りに比べてしいんとした静けさに包まれているにも関わらず、ここを目当てに来るお客さんがとても多いから。そう、“わざわざ来た感”を得られる場所なのです。
店内に足を踏み入れると真っ先に目に飛び込んでくるのは、ショーケースにずらりと並んだプレッツェルやクロワッサン。パン屋さんは星の数ほどあれど、プレッツェルが売っているお店って意外と少ないもの。やはり人気ナンバー1です。人気ナンバー2はラウゲンクロワッサン。カリッとした香ばしそうな食感を想像するだけでお腹が空きます。今回は、ほかにも小さい子どもにも人気があるという、黒けしのペーストを巻き込んだモーンシュネッケンや自家製カスタード入りのヴァニルズロザなどを購入しました。
実は「フラウクルム」はテニスプレーヤーの伊達公子さんがプロデュースされているお店で、彼女がヨーロッパで生活する中で感銘を受けたのがドイツパンだったことから、日本でも同じような感動を味わえるお店をつくりたいと2016年にオープンしたそうです。
そして、ヨーロッパの暮らしで一番好きな時間が散歩をしながらおいしいパンとコーヒーを味わうことだったそうで、「フラウクルム」はコーヒーにもこだわっています。豆は東京・千歳船橋に本店を持つ人気店「堀口珈琲」に特注したオリジナルブレンド。ほろ苦さを強調しつつも優しい甘みのある、どんなパンにも合いそうなクセのない味わいが特徴です。
「シャワーで満遍なく注湯する方式の、珍しい貴重なドリップマシンを使っているので、当店のコーヒーファンの方も本当に多いですね。伊達さんはスポーツ選手なので、こだわりの季節のコールドプレスジュースもおすすめですよ」とは、スタッフの鬼塚ユウさん。オレンジや季節のフルーツをたっぷり使っているのでビタミンもたっぷりでおいしそう。
ちなみに鬼塚さんは恵比寿在住で小学生の双子のお子さんがいらっしゃるのですが、二人ともフラウクルムのパンが大好きなのだそう。
「恵比寿は飲食店がたくさんあるので賑やかな大人の街という印象があると思うのですが、恵比寿ガーデンプレイスをはじめ、子どもが走り回れる公園もたくさんありますし、家族でゆったり過ごせる場所が結構あるんですよ。下町っぽさもありますし、いろんな顔があるのが恵比寿の魅力ですね」
パンづくりを担当するのは冨川貴史さん。10年以上さまざまなパン屋さんで経験を重ねてきたベテランです。室温や発酵時間の管理を慎重に見極めながら、毎日ていねいにパンと向き合っています。
過去に体調を崩されたことがあり、栄養価の高いドイツパンと出会ってからはみるみる体調がよくなったことから、ご自身でもドイツパンをつくられるようになったといいます。
「ライ麦パンは砂糖を使わないのでヘルシーなんです。ビタミンB類をはじめミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含んでいますし、リジンという子どもの成長に欠かせないアミノ酸も含まれています。スライスしてサラミや生ハム、ウォッシュチーズなどのクセのあるディップをのせて食べるととてもおいしいですよ。僕は近所の『あか牛精肉販売所』のレバーペーストをのせて食べるのが大好きです」
ライ麦パン「クルムブロート」は月・水・金曜日に焼き上げるので、残念ながら取材時にはなく後日購入し、おすすめの「あか牛精肉販売所」のレバーペーストをのせていただきました。香ばしい風味のライ麦パンとしっとり濃厚なレバーペーストの組み合わせはやみつきになるおいしさで、ワインとの相性も良さそうです。
パン職人歴50年のレジェンドが焼き上げる「EBISU BANH MI BAKERY」のバインミーサンドイッチ
続いて向かったのは、恵比寿駅前の古き良き商店街「えびすストア」。そのなかでもひときわ目立っているのが「EBISU BANH MI BAKERY(エビスバインミーベーカリー)」です。駅とは反対側のバス通りに面した商店街の入口にあります。住民やオフィスワーカーの方はもちろん、休日は遠方からわざわざこちらのバインミーを買いにくる方もいるのだとか。
こちらは高円寺や下北沢でベトナム料理店など計6店舗を経営するフクモチック有限会社の社長、茂木 貴彦さんのお店で、ベトナムで本場の製パン技術や具材の作り方を習得した本格派です。
「当店は、お店で生地から作る、焼き立て、できたての本物のバインミー(ベトナム語でパン)を使用したバインミーサンドイッチを手軽に食べられるというのがコンセプトです。ベトナム本来の製パン方法にこだわった、ベトナム北部ヴィンフック省の省都ヴィンイェン市の老舗ベーカリー『HUNG YEN BAKERY』というお店に社員で2週間の住み込み研修を実施し、その技術を基本から忠実に学ばせてもらいました」とは茂木さん。
恵比寿で出店しようと考えていたわけではなかったそうですが、「えびすストア」でテナント募集が出ているのを見て即決したそうです。
「古い昭和っぽい雰囲気が残る築50年くらいのビルで、ベトナムと同じ雰囲気を感じました。ここで本格的なバインミー屋を作ったら、ベトナムを感じてもらえるのではないかと思ったんです」
店の斜め向かいには製パン所があり、「EBISU BANH MI BAKERY」のパンはすべてこちらで焼いたものを使用しています。パン職人の石原さんはなんとこの道50年!!薄皮でパリッとした食感でありながら、中はふわふわとした絶妙な焼き具合のバインミーは、石原さんの長年の経験が活かされているのです。
「神戸発祥のDONQ(ドンク)というパン屋さんで長年勤めていました。日本のフランスパンブーム火付け役でもあるフィリップ・ビゴさんともドンクで一緒に働いていた時期があり、私自身もフランスパンづくりにはこだわりを持っていたんです。バインミーとフランスパンとの違いは皮の厚さと生地の質感です。素材は同じなのですが、温度や寝かせ方で味が変わります。ベトナム直伝のバインミーももちろんおいしいですが、日本の気候風土に合ったつくり方で、誰が食べてもおいしいと思えるパンを提供したいと思いながら毎日焼いています。レシピは企業秘密ですが、パン生地を割った時に、イーストではなくオレンジの香りがすると焼き上がった時にものすごくおいしいものに仕上がるんですよ」
一番のこだわりは、サンドイッチとして食べた時に、口の中で具材とパンが一緒になくなるようなバランスになるようにしているところ。日本にもバインミーサンドイッチ屋さんはたくさんありますが、「EBISU BANH MI BAKERY」のバインミーが特別おいしい理由は石原さんが長年かけて培った焼き上げ技術にありました。ちなみに石原さんの焼いたバインミーは全国各地のバインミーサンドイッチ店でも卸しているそうです。
この日購入したのは人気メニューの「バインミーサイゴン」と「揚げサバトマトソースのバインミー」、そしてベトナムコーヒー。思いがけずパン職人のレジェンドともお会いできて、大充実の取材となりました。
桜の季節、恵比寿の名物公園「タコ公園」でゆったりとした時間を
そんなわけで、「ひらく庭」新企画第一回目のピクニックは渋谷区立恵比寿公園(通称=タコ公園)にやってきました。平日の昼間は近隣の園児やオフィスワーカーの憩いのスポットとなっていますが、桜の木がたくさんあるので春はお花見スポットとしても人気。
「フラウクルム」のもっちり香ばしいプレッツェルやクロワッサンをつまみながら、「バインミーサイゴン」をいただきます。クロワッサンの原型とも言われる三日月型のパン「クレッセント」はシンプルな味わいながら噛みしめるほどに甘みが感じられます。
チャーシューやレバーパテ、なますが入った一番人気の「バインミーサイゴン」はベトナムでも定番メニューというだけあって安定のおいしさ。チリソースのピリ辛と練乳入りの甘いベトナムコーヒーが相性抜群です。そして、「フラウクルム」の黒けしのペーストを巻き込んだモーンシュネッケンは甘すぎないスイーツパンで、デザート感覚でいただけます。伊達公子さんこだわりのコーヒーとともに、ほっこりしながら恵比寿ピクニックを満喫しました。今後も恵比寿でおすすめのテイクアウト情報をお届け予定なので、ご期待ください。
■FRAU KRUMM BREAD&COFFEE
営業時間:8:00〜17:00
定休日:日曜日
03-6721-6822
■「EBISU BANH MI BAKERY」
営業時間:11:00~20:00
定休日なし(臨時休業はブログで告知)
※売切れ次第終了
03-6319-5390