Photo : Ukyo Koreeda
Edit & Design : BAUM LTD.
夏の夕暮れ時、宮澤さんと待ち合わせたのは「BLUE NOTE PLACE」のエントランス。
この場所は、2022年12月にブルーノート・ジャパンが恵比寿ガーデンプレイスにグランドオープンした食と音楽を融合させた新業態のダイニング。吹き抜け2階建ての開放的な店内には、ダイニング、バー、ラウンジ、テラスと多様なシーンに対応するスペースが。時間の移り変わりを感じながらランチからディナータイムまで利用が可能とあって、平日も休日もたくさんの人で賑わっています。
宮澤さん 今回はちょっと久しぶりかな。オープンして以来、会食でお客さまをお連れしたり、1人でフラッと立ち寄ったり、よく利用させてもらっています。
受付スタッフと気さくに話す姿に、常連ならではの余裕が垣間見える宮澤さん。レンガ造りのシックな外観ですが、中に入るとたくさんのアートが散りばめられたスタイリッシュでモダンな空間に胸が躍ります。
宮澤さん 実はこの場所、リニューアル前は「ビヤステーション」だったんですよ。1994年の開業時から恵比寿ガーデンプレイスの中核施設の1つだったのですが、2021年に幕を閉じ、その後「BLUE NOTE PLACE」さんが入ってくださったんです。でもここまでガラリと内装がお洒落にリノベーションされたのには驚きましたね。
「BLUE NOTE PLACE」のリノベーションを手がけたのは乃村工藝社A.N.D.の小坂竜さん。以前のビヤステーションの梁を切断し、店舗中央に新たに吹き抜けを設けることでダイナミックなレストラン&ライブ空間を創出しました。レンガ造りの建物を生かしつつ、使用した木材は廃材となっていた足場板を再利用するなど、環境にも配慮した内装が本当に洗練されていて、お見事です。
宮澤さん 恵比寿は住みたい街ランキングに上位する素敵なまちですが、恵比寿ガーデンプレイスのリニューアル時に考えたのは、住む人だけでなく、働く人、遊びに来る人、学びに来る人、さまざまな層にとって、これからの恵比寿に必要なものはなんだろうかとみんなで考えたんですね。導き出されたのはやはり「文化やアートの発信の場」だったんです。施設の顔とも言えるこの場所で、「恵比寿の街に音楽を」というコンセプトでブルーノートさんに入ってもらえたら、もっと恵比寿のまちの魅力が深まるだろうとワクワクしながら想像したことを覚えています。
恵比寿の街に音楽を根付かせたい、そんなサッポロ不動産開発株式会社の想いを受け、新たなブルーノートが誕生したのがちょうど2年前の秋。宮澤さんが思い描いた空間でこの2年間、どのような過ごし方をされてきたのでしょうか?
宮澤さん といっても、僕自身は音楽に詳しいわけではないんですよ(笑)。もちろん音楽は好きですけどね。「BLUE NOTE PLACE」の良いところは、ブルーノート東京(南青山)とは違って、基本1100円のテーブルチャージでライブとともに食事を楽しめる気軽さが特徴です。JAZZだけでなく、幅広いジャンルの音楽が楽しめて、若いアーティストの出演も多い。この場所ができたことで、ライブを聴きながらビールを飲むという楽しみ方が日常になった感覚がありますね。弊社の社員もたまに見かけます。
そんな宮澤さんのお気に入りの席は、1階バーカウンター前のハイテーブル席。ほどよい高さの椅子に腰掛けてステージを眺めると、少し段差があるためか、とても視界が開けて居心地がいい。
宮澤さん 職場の仲間と大勢できてもいいし、こうやって一人で来ても落ち着くスペースがあるというのが本当に素晴らしいと思います。ふだん一人で飲食店に入ることもありますが、どうしても間が持ちづらいというか、長居しにくいですよね。でもここならライブがあるので一人で過ごすのにちょうど良いんです。しかもライブ時間が前半30分、後半30分なので、18時半に入って食事して、19時から30分だけライブを楽しんで帰るというライトな過ごし方もできる。その時の状況によって利用の仕方を変えられますし、何よりライブがあることで毎回新鮮な感覚を味わえるのが最高ですね。
宮澤さんが一人で来た時に必ずオーダーするのが「USポークキューバンサンド パイナップルのスパイスコンポート」。USポークのハムとライム風味のプルドポークをダブルでサンドした、見た目以上にボリュームのある一品です。
宮澤さん 仕事帰りのおじさん的には18時頃ってちょうど小腹が空く時間なんですね。その時間にこのキューバサンドがぴったりなんです。ピリ辛のサンドにほんのり甘いパイナップルが付け合わされている
この日のライブは、ジャズシーンを牽引する宮地遼さん、小沼ようすけさん、KANさんのトリオ。極上のグルーヴ感と多彩な音色に引き込まれていきます。ライブと食事を楽しみながら、お一人でどんなことを考えながら過ごしているのでしょうか。
宮澤さん 何も考えませんね。ここに来るときはあえて頭を空っぽにしています。仕事帰りに飲食店に立ち寄ると、どうしても仕事のことを引きずってしまいがちですよね。自宅に帰れば家庭のことを考えますし。でもここならライブがあるから音楽だけに没入することができる。読書や映画もですが、すべてを空っぽにして没入できる時間が自分にとって必要なんだなと感じます。
ちょっとした心のデトックスみたいな感覚なのかもしれません。スマホでいえばキャッシュクリアするような感覚で溜まっていたものをリセットする。そうすると、仕事のこともプライベートのこともまた新しい視点で見られるようになるんですよね。だから、あえてなにも考えずに楽しめる時間を少しだけ作りたいというのが本音です。映画館にも行くのですが、最低2〜3時間は必要になってくるので、家に帰ると23時を過ぎてしまうんです。それはちょっと腹を括らなきゃいけないのだけど、「BLUE NOTE PLACE」であれば小1時間でその時間が過ごせますから。
最後に、ビジネスにも良く利用されているという宮澤さんが、音楽は人と人との距離を縮めるパワーがあるということを身をもって体感されたエピソードを話してくれました。
宮澤さん 私の立場的に会食も多いのですが、「BLUE NOTE PLACE」にお客様をお連れすると本当に喜んでいただけるんです。高級レストランの個室で食事をするのとは違った感覚というか、お互いの距離の縮まり方が違うんです。ビジネスの場で一緒に音楽を楽しむというのはそうそうないですよね。会食の度に音楽の力を感じています。密談をしたいときは2階席がおすすめです(笑)。
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自宅のある板橋区から電車通勤をされているという宮澤さんにとって、オフィスとJR恵比寿駅を結ぶ帰路に「BLUE NOTE PLACE」ができたことは、人生に彩りや豊かさをもたらす素敵なきっかけになったのかもしれません。恵比寿ガーデンプレイス開業30周年を機に刷新したブランドコンセプトは「はたらく、あそぶ、ひらめく。」。この「ひらめき」の部分は、もしかするとこんなふうに頭を空っぽにして、音楽や映画、アートといったカルチャーに没入することで生まれるのかもしれない、と宮澤さんが話されていたことが印象的でした。そして、どんな立場であろうと、肩書きがあろうと、音楽は関係なく人と人を笑顔で繋げてくれることを確信した夜。次回は一人で同じ席に座り、キューバサンドを頬張ろうと決意した夜でもありました。
BLUE NOTE PLACE
住所:東京都渋谷区恵比寿4-20-4 恵比寿ガーデンプレイス
営業時間:月-土 11:30〜23:00 /日祝11:30am-22:30pm ※不定休
03-5789-8818
※詳細は公式サイトをご覧ください