ギフト・コレクション #2

アンティークショップで自分へのギフトを探す 【前編】Torico-lore

May 23rd,2023
おいしい飲食店が点在する街、というイメージが強い恵比寿ですが、ゆっくり散歩をしていると、インテリアや雑貨店、セレクトショップなど、個人で経営されているような小さいけれど魅力的なショップが多いことに気づきます。雑居ビルの一室や路地裏など、「こんなところに!?」という発見や驚きがあることも恵比寿という街を歩く楽しみの一つ。

今回は、そんな恵比寿の街に数あるお店の中からアンティークショップに注目。イギリスやフランスなど、海外のアンティーク雑貨を買い付けて販売されている個人経営のお店が実は恵比寿に数多くあることは意外と知られていないかもしれません。

「ギフト・コレクション」第二回目では、漫画家の方がオーナーのお店や、1980年代から経営されている老舗店のアンティークショップなど、魅力的なお店を2軒ピックアップし、ギフトにぴったりな素敵なアイテムをご紹介します。
Text : Kana Yokota         Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)   Edit & Design : BAUM LTD.
Text : Kana Yokota
Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)
 Edit & Design : BAUM LTD.


フランスアンティークショップ「Torico-lore(トリコロール)」は恵比寿駅から歩くこと10分弱の場所にあります。恵比寿駅からは、1階にShake Shackが入っているアトレ恵比寿西館の右横の通り、少し急な長い坂道を登って向かいます。坂を登り切り、信号を渡った先の通りにある白くて可愛らしい外観のお店です。

扉を開けると広がるのは、ずらりとディスプレイされたホーローのポットやキャニスター。そして、さまざまな大きさのカゴバックやテディベア、陶器などが味わい深い什器の上に並びます。

このお店は、アンティーク雑貨コレクションが趣味の少女漫画家・稚野鳥子(ちや・とりこ)さんがオーナーとして2016年にオープン。(『クローバー』シリーズ、『東京アリス』シリーズなど)

「稚野が大好きなパリに旅行に行くたびに、蚤の市に出かけてコレクションしてきたアイテムが年々増えていき、次第に「骨董ジャンボリー」という日本の骨董市に出店するまでに。たまたま恵比寿のこの古いアパートの物件を見つけたことをきっかけに開業を決意したそうです。」と教えてくれたのはスタッフの柏木さん。

一見小さな店舗ですが、中に入ると奥の方まで商品が並び、ゆっくりすべての商品を見ているとついつい時間を忘れて長居してしまいます。

「販売している商品はほぼフランスをはじめとするヨーロッパから買い付けたものです。希少価値の高い商品ですと10万円を超えるものもありますが、数千円のお求めやすい価格の商品もあるので、ぜひ蚤の市を散策する気分で楽しんでください」。

それではここで、おすすめのアンティークアイテムをご紹介します。

No.1

手描きペイントがレアなホーローアイテム

カフェティエール

(写真左/47,300円、写真右/97,900円)

オーナーの稚野さんが昔から趣味で集めていたという、「Torico-lore」を象徴するようなアイテム「カフェティエール」。ブルーやピンク、ホワイト、グリーンなど、店内のどこを見渡してもその存在感に目を奪われます。

「カフェティエール」はフランス語でコーヒーポットという意味。数あるカフェティエールのなかでも、このような手描きのペインティングが施されたものは珍しいようで、稚野さんは特に鳥が描かれたものがお気に入りだそうです。経年による傷や汚れも味わい深く、アンティークの魅力を引き立たせています。錆などがあるため、実際にコーヒーポットとして使用することはできませんが、そのままオブジェとして飾ったり、花を活けたりと、置くだけで部屋の主役になりそうなアイテムです。

No.2

大切な小物や思い出の品を入れて

カルトナージュボックス

(写真左上/19,800円、写真左下/9240円、写真右上/25,300円、写真右下/4,675円)

華やかな花柄のファブリックが可憐なアンティークカルトナージュ。カルトナージュとは、厚紙で作られたボックスに布を貼って美しく仕上げられたアイテムで、ヨーロッパの伝統工芸の一つ。「Torico-lore」には大中小さまざまなサイズのカルトナージュが揃います。

写真右上のメタルブレードとリボン刺繍の小さなカルトナージュ、実は1900年代初頭フランス東部のBELFORTにあったショコラティエのチョコレートボックスなのだそう。お裁縫道具やジュエリー収納にいかがでしょうか?その下のプロヴァンス柄のものや、紺地に大振りのローズが色鮮やかで印象的なものなど、色褪せた風合いにも愛おしさを感じるカルトナージュは置いておくだけでも空間を引き立てます。

No.3

プティフールやフルーツを盛り付けて

リュネヴィル社のおままごと用小皿

(各/5,500円)

今、「Torico-lore」で一番の人気商品は? とたずねると紹介してくれたのがこちらのリュネヴィル社のおままごと用小皿です。猫の絵柄が可愛いこちらはChat Noirシリーズといって、製造期間が短かったのか数が少なく人気が高いアイテムなのだそうです。

リュネヴィル社とは、フランス、ロレーヌ地方にあるリュネヴィルで、18世紀に近郊のサン=クレマンで採れる粘土をもとに、ジャック・シャンブレットがスタートしたのがはじまり。設立当初は上流階級向けの高級な食器を生産していて、1749年にはロレーヌ公の領主ご用達に。ジャック・シャンブレットが亡くなった後、ドイツ出身のケラー(Keller)ファミリーと、友人ゲラン(Guerin)ファミリーが経営を引き継いだため、バックスタンプはLunéville K&G(Lunéville Keller & Guerin)となります。陶器の製造を工業化し、貴族のための陶器から、中流階級の生活にも浸透していきました。こちらのままごとシリーズは1800年代後期のものだそう。飾って眺めるのはもちろん、小さなお菓子やフルーツなどをちょこんと盛り付けるのもおすすめです。

No.4

美しく芸術的なレースのパッチワーク

ノルマンディーレース

(ノルマンディーレース 9,000円〜)

続く人気アイテムは、ノルマンディ地方で作られたノルマンディレース。もともとは服飾用やハンカチなど装飾小物に使われていた高価なレースのはぎれをとっておいて、パッチワークで繋げて新たな作品として生まれ変わらせた技法のレースのこと。さまざまな種類のレースが楽しめ、高価なレースが散りばめられたものもあり、1920年頃に全盛期を迎えたそうです。

立体感のある刺繍編み模様の技法が散りばめられ、とても複雑でありながら手作業のぬくもりも感じられるノルマンディレースは、テーブルやチェスト、キャビネットなどにふわりと掛けるなどしてぜひ模様や風合いを楽しんでください。

No.5

まるでアート作品のようなカードはインテリアに

ポストカード

(ポストカード 各1,100円〜)

経年による紙製品独特の小さな色褪せやシミも味わい深いポストカード。1900年代初頭に送られたカードを中心に、グリーティングカードやトレーディングカードなど、たくさんの種類が揃います。そのまま飾っても、写真立てなどで額装して小さな作品としてディスプレイしても素敵です。

ところで、切手が販売されたのはいつ頃かご存知でしょうか? 世界で最初の切手は1840年にイギリスで生まれました。ペニーブラックと呼ばれる1ペニーの切手を貼ることで、自由に手紙を郵送することが可能となりました。そして、その同年、ロンドンに住む作家のセオドア・フックが自作と思われるポストカードに切手を貼って、面白半分に自分宛に送ったものが世界初のポストカードだと言われています。1900年代初頭にはポストカードを送り合うことが多くなり、次々と美しい絵柄のカードがつくられたようです。こういった歴史を知ると、ますます当時のポストカードに愛着を感じます。

No.6

歴史を重ねた美しいドレスで誕生を祝う

ベビードレス

(写真左/8,800円、写真右/33,000円)

店内奥のラックにずらりと吊るされていたベビードレス。ふんわりとしたシルクのピンクワンピースや胸元のリボンが愛らしい洗礼服など、存在感のあるドレスに心奪われます。

「Torico-lore」のベビードレスは保存状態、コンディションともに良いものばかりなので、ギフトとしても喜ばれること間違いありません。1900年代初頭につくられたドレスが、時を経て新たな命の誕生を祝うドレスになるなんて素敵ですよね。

***

全体的に優しいトーンの色合いが特徴的なフランスのアンティーク雑貨。古いポストカードの絵からも感じられる通り、芸術の都で生まれた存在感のあるプロダクトは、1点だけでもオブジェのようにインテリアを華やかにしてくれます。大切なジュエリーを入れる小箱や、休日のティータイムに気分を高揚させてくれるカップなど、自分へ贈るご褒美ギフトとしてもフランスのアンティークアイテムはぴったりだと思います。

コロナ禍では海外への買い付けへ行くことが難しかったけれど、これからはようやく再開できるとあって、「Torico-lore」の品揃えをチェックしに行く楽しみも増えそう。ぜひフランスを訪れた気分で、あなたの心に響く一点を探しに出かけてみてください。

✳︎後編は5月末ごろに公開予定です!

<Torico-lore>

〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2丁目25−12 ハイム向山 1F
営業時間:11:00〜18:00
定休日:水曜日
TEL. 03-6712-2208
https://www.toricolore.com/

More