ギフトを検討している方のなかには、せっかくの贈り物は心を込めて選びたいものの、忙しさに追われて、コレ!というものを探すのに困っている…そんな悩みを抱える方も少なくないだろう。
「ギフト・コレクション」シリーズの初回となる本記事では、そんな方々のお悩みにうってつけとも言える、アートに関わる個性豊かなギフトを紹介する。贈る側と贈られる側の、楽しくユーモアのある会話のきっかけになるものを紹介したい。
恵比寿エリアに2つの店舗を構えるショップ「NADiff」にご協力いただき、ギフトにもぴったりな商品を推薦してもらった。前編では、国内外の写真家の作品集を最新作から秘蔵のレア物まで、5,000冊以上を取り揃える「NADiff BAITEN」が選んだアイテムたちを紹介する。
「NADiff BAITEN」は、東京都写真美術館に併設されたミュージアムショップでありながら、観覧料を払わずとも入店が可能。散歩途中にふらりと立ち寄り、そのラインナップを眺めるも良し。もちろん、展覧会を鑑賞し、豊かな気持ちの延長でギフトを選ぶのも良いだろう。
写真が好きでも、そうでなくとも、写真を身近なものとし、新たな視点やきっかけをくれるようなアイテムを選抜した。
Text : Shunpei Narita Photo : BAUM LTD. Edit & Design : BAUM LTD.
Text : Shunpei Narita
Photo : BAUM LTD.
Edit & Design : BAUM LTD.
No.1
コーヒーテーブルブックにもよし
William Eggleston
『William Eggleston’s Guide』
1976年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された写真家ウィリアム・エグルストンの個展に際して、同館が刊行した写真集の復刻版。
「マガジンラックとか、部屋の中にポンと飾っておくだけで様になる一冊ってなんだろう?と考えた時に、表紙のインパクトが強いこの本を選びました」と店長の田代さんが話すとおり、表紙にドーンと据えられているのは、くすんだグリーンの三輪車。金色の箔押しの題字も、確かにインパクトが大きい。
写真集の舞台は主にアメリカ南部の郊外で、ニューヨークやサンフランシスコといったポップカルチャーの中心地で描かれる「華やか」なアメリカとは異なる。さらに、被写体は観光スポットではなく、ごく日常的な事物。それらを選び取ったエグルストンの感覚がカラーフィルムによる独特の色合いと相まって、普遍的な魅力を放っている一冊。
写真集を自ら購入しないようなタイプの人にも、コーヒーテーブルブックとして渡したら、きっと楽しんでもらえるはず。最初はパラパラめくるだけだったとしても、日ごとに味わい深くなっていくだろう。
No.2
本物の花の代わりに贈る、花の写真集
Kyoji Takahashi 『Lost time』
誰かに花を贈るのは気恥ずかしいという方も、写真を媒介にしてプレゼントするなら、グッとハードルが下がる気がする。花を主題とした名作写真集は数多あるが、なかでも今いちばん推薦したいのが、髙橋恭司の新作『Lost time』だ。
フランスの伝説的な雑誌『Purple』など、ファッションの最前線で活躍。後進の写真家たちにも多⼤な影響を与えた巨匠が「花」をモチーフに撮影を行うとどうなるか? その出来栄えに対して、髙橋自ら「僕の撮る花の写真は実際の花より美しいのではないだろうか」とコメントしているように、瑞々しく咲き誇る花の表情が美しく切り取られている様は、思わず唸ってしまうこと請け合いだ。
デザイン・装丁を手掛けたのは、『Purple』のアートディレクターを務めたパリのアーティスト、クリストフ・ブランケル。タイトルの『Lost time』はマルセル・プルーストの大作『失われた時を求めて』から。5年後、10年後にみても色褪せないような、美しく詩的な一冊に仕上がっている。
No.3
年の節目に贈るのにぴったりな一冊
野口里佳『父のアルバム』
東京都写真美術館で2023年1月22日(日)まで「野口里佳 不思議な力」展を開催している、野口里佳による写真集。生前に父親から受け取ったネガフィルムを、作家自ら暗室で少しずつプリントしてまとめたものだ。
彼女の父はプロの写真家ではない。決して写真集として日の目を見るなど思いもしなかった写真だけに、商業的な意図は感じない。ただひたすら、家族との親密な距離感が伝わる写真たちが並んでいる。それらが読む人の心を強く揺さぶるのは、大切な家族との時間を記録するというのが本意だからか?
デジタル全盛の現代にあって、PC上で写真をフォルダに入れて整理するのが当たり前になった。プリントして一冊のアルバムにするという機会はめっきり減ったことだろう。だが待ってほしい。アルバムにするのは決してプロに限られた特権ではなく、誰にでも許されている営みである。たとえスマートフォンで瞬時に撮られた写真だったとしても、だ。
一年の出来事を振り返りつつ、誰かと過ごした日々の写真を紙のアルバムに丁寧にまとめてみたくなる。そんなことを感じさせる写真集を贈ってみるのはいかがだろう。
No.4
さりげなくも愛おしい、唯一無二のギフト
プリズム
「野口里佳 不思議な力」展の中でも、被写体として選ばれている「プリズム」。ガラス面に反射する光と影のグラデーションが美しく、同店でも人気のアイテムだそう。
このプロダクトはガラスの三角形を組み合わせてキューブ状にしたもので、本来はプロジェクターの部品として使われるものだった。しかし生産の過程で小さな傷や欠けがついて、製品には使用できなかった。だが、欠けてしまったところに光が集まるため、プリズムそのものは、完全でないが故に美しく輝く。一点一点異なる「歪み」に、どこか親しみを感じる。
光のあたり方で表情が変わるので、置き場所や時間の経過によって見せる顔つきが全く異なるのも、見ている人を飽きさせない。値段も1,650円と手頃であり、カジュアルギフトとしても最適だ。
No.5
カメラを組み立てる楽しさをプレゼント
TOPMUSEUM ピンホールカメラ
何か新しいことをはじめたい、という時の候補として「カメラ」があるだろう。とはいえそれをプレゼントするとなると、渡す相手の趣味嗜好もあるし、なかなか難しそうである。そのちょうど一歩手前、かゆいところに手が届くようでおすすめなのが、組み立て式の紙製ピンホールカメラ。
写真の起源とも言われているピンホールカメラは、最先端の技術からするとまさに真逆で、アナログそのもの。たとえばシャッタースピードなら、自らの手を実際に動かしながら調整をする必要がある(暗い場合は、十分な光量を取り入れられるまでしばらくシャッターを開けておく場合もあるそう)。しかしそれは裏を返すと、デジタルが“うまいこと調整してくれている”部分を自らの手で体感することによって、写真の仕組みを学べることでもある。ビギナーにとっては意外にもこれが効果的ではないか。
カメラを自ら組み立てていくというプロセスも、プラモデルを組み立てるような面白さとクラフト感があるし、お子さんがいる方なら一緒に楽しむこともできるはず。中に一体何が入っているかは、実際に組み立てていただくときのお楽しみ。
No.6
子どもも大人も楽しめる
色と形と言葉のゲーム
不思議な形をしたカラフルなカードと言葉のカードを使って、ひとりひとりが感じたことを話しながら、その違いを楽しめる「色と形と言葉のゲーム」。
東京都写真美術館の教育普及プログラムにおいて、美術作品鑑賞を行う前のウォーミングアップ用教材として使われているこのゲームは、観察力、想像力、逆から考える力など、子どもたちの多様な力をはぐくむようにと開発された。とはいえ楽しめるのは子どもに限らない。大人同士のコミュニケーションツールとして、またファシリテーション力向上にも一役買ってくれそうだ。
知育玩具にはいろんな種類があるが、イメージや言葉にまつわるもので、なおかつ大人と子どもが一緒に楽しめるというものは珍しい。年末年始の休み中、普段より脳がほぐれているタイミングでイマジネーションを膨らませる「一人遊び」にも良さそうだ。もちろん家族や友人で集まった時にも大活躍しそうなことは、言うまでもない。東京都写真美術館が開発したオリジナル商品なので、NADiff BAITENならではという特別感あるギフトとしても良いだろう。
遊び方は、こちらの動画を参考に。
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クリスマスプレゼント、年末年始の挨拶などでギフトを渡す機会が何かと多くなる季節。「誰かに何かを贈りたい」というシンプルな目的を検討することが、「頭を抱える悩み」になるのか、それとも「幸せな考え事」になるのか。それは心の持ち方次第だ。アートの刺激に触れながら大切な人に贈るギフトを考えるのは、きっと後者の視点で贈り物を検討する一助になるだろう。
贈られる側のことを考えながら、自らもその時間を楽しむギフト選びを。「NADiff BAITEN」ならば叶えられるはず。
アート系ショップで探すユニークギフト【後編】NADiff a/p/a/r/t へ
<NADiff BAITEN|東京都写真美術館>
写真と映像に関する国内外の書籍を中心に、展覧会カタログ、オリジナルグッズをはじめとする展覧会関連商品を展開。そのほか、非流通本・貴重な古書やデザイングッズを揃える。
〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内 東京都写真美術館2F
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