「evergreen pet & cafe restaurant」 の施設について教えてください。
茂木 ここは2023年6月9日にオープンしました。私は獣医動物行動学を専門としており、それまでヤマザキ動物看護大学で、動物行動学の専任講師をしていました。ちょうどその頃、当院のオーナーが、ご自身のペットを突然亡くすという悲しい出来事に見舞われたのです。しかしその悲しみからすぐに立ち上がり、「ペットを突如として亡くす人をなくしたい」という強い想いから当院の開業を決められて、そこに私もお手伝いしたいとご一緒することを決意しました。
「evergreen pet & cafe restaurant」がある恵比寿南一公園は渋谷区の土地で、サッポロ不動産開発が管理しているのですが、言わば”公”という位置づけに、さらに使命感が湧いたのも事実です。オーナーには地域のみなさまのために開かれた施設であって、ここに来たら、「ペットのためのワンダーランドだ」と思ってもらいたいという気持ちがありました。恵比寿という場所もあり、「健康長寿で恵比寿顔」になっていただきたいと思っています。ペットも、飼い主さんも笑顔でいられる場所を目指しているのです。
1階はカフェで、ペット連れでのご利用もできますが、”ドッグカフェ”として打ち出したくはないというのもオーナーのこだわりです。欧米のように、ペットと一緒に普通に入れるカフェ、飼い主さんが行きたい場所にペットを同伴しているだけ。ドッグカフェを楽しむというより、飼い主さんが自分自身のためにおいしいものを食べて、豊かな気持ちになって、それが一緒に過ごしているペットにも還元され、みんなが幸せになる。そういう場所を作りたいと思ったのです。
また、当院はペットと飼い主様の健康と幸福を守る総合動物病院ですが、具合が悪くなったペットを診療するだけの場所ではありません。未病の動物のケアをしたり、行動学に基づいたトレーニングを行ったりと、ペットと飼い主さんを生涯にわたりサポートするのが私たちの役割です。
病院としての機能だけではないのですね。具体的にどんなことが行われているのでしょうか。
茂木 1階のカフェもそうですが、2階の広々としたドッグランスペースについては、三方が硝子の窓に囲まれ、自然の豊かさを感じることができる特別な空間です。とは言うものの、ペットが自由に走り回れるドッグランではなく、ペットをお預かりして幼稚園としてトレーニングを実施する場所となっています。
お預かりというのは、単にお預かりするだけではなく、飼い主さんとペットのことをよく理解し、トレーナーからそれぞれのペアにとって必要なサービスをお伝えしたり、行動学的、ドッグトレーニング的に最適なコミュニケーション方法をご提案しています。お預かりしているときに気付いた不調や問題をいち早く飼い主さんにお伝えするのも私たちの仕事です。
飼い主お一人おひとりと向き合うため、時間もかかりますが、オーダーメイドで対応することが大切だと思っています。恵比寿にはペットを飼われている方が多くいらっしゃいます。周辺をペットと一緒に歩いている方も多いですし、公園内を散歩されるペット連れの方も多くいらっしゃいます。カフェにふらりと立ち寄ってくださって、病院や幼稚園に興味を持ってくださる方も大勢います。恵比寿ガーデンプレイスに集まっていらっしゃるワンちゃんコミュニティがあるんですよね。そこで当院のことが話題に上がったからと来てくださることもあります。
飼い主さんの中には、ペットのちょっとした困りごとやトラブルがあっても、そのうち治る、と思われる方も少なくありません。ですが、ペットの幸せに繋がることを私達が展開していることをみなさんに知っていただきたいです。足を運んでくだされば、何かしら私達がサポートできることはあります。そこからトレーニングであったり、トリミングであったり、皮膚科であったりという風に広がっていくのだと思っています。皮膚科とサロンも密接な関係ですよね。今の状態の皮膚にどのシャンプーが合っているのか、などは、皮膚科とサロンが連携できているからこそ提案できます。トータルケアが当院の特徴ですので、飼い主さんもここに来ていただくことで、こうすれば良いのだという新たなことに気付いていただけるはずです。
ペットをある程度の時間預かることによってどんなメリットがあるのでしょうか?
茂木 ペットを短時間見るだけでは、その子の本来の姿を理解することがなかなかできません。ですが、広々とした空間で、のびのびと動き回るようになると、徐々に彼らの本来の姿が分かります。人間の子どもの幼稚園でも、お昼休みやお昼寝の時間帯などに保育士さんが一生懸命今日の日記や気づいたことなどを連絡帳に書かれると思うのですが、こちらでも同じことをしています。夕方飼い主さんにお返しする際、一日どういう様子だったのか、この子に、あるいは飼い主さんとペットちゃんに、どんなサポートが必要なのか、ということもお話ししています。調子が悪いとか、健康状態を診てもらいたいと言ってクリニックにいらっしゃる方もいますが、トレーニングに興味があるという方が非常に多い印象を持っています。
保護犬に対しても様々な取り組みをされていると伺いました。どのようなことをされているのでしょうか
茂木 オープンした当初は、本来であればご縁があるタイミングで体調を崩してしまった子犬や子猫をこちらで保護し、里親を探していました。最近は保護犬と飼い主さんを繋ぐことはプロの方にお願いしていて、我々は2階のスペースをお貸しして譲渡会を実施しています。現在、月に1回は犬、1回は猫、と開催しているのですが、インスタグラム等でご案内をし、毎回30名くらいの方が参加されています。
ですが、本当はこうした受け皿があることが保護犬、保護猫を作ってしまう要因のひとつということも忘れてはいけません。もっと社会的に活動をして、不幸なワンちゃん、猫ちゃんを誕生させない状況を作っていく必要があると思っています。
不幸な犬猫を増やさないためには、安易に飼い始めないこと。安易な繁殖を行ってはダメなのです。繁殖についても、ドイツなどでは厳しく制限されていますが、日本においても不幸な命を産ませないようにするべきです。しっかりとした知識のある人たちだけが繁殖可能となれば世の中は変わってくるのではないでしょうか。飼い主さんたちは、きちんとしたブリーダーさんからしか購入しない、ということを頭に入れておいてほしいですね。このような啓蒙活動も、我々の役目だと思っています。
保護犬、保護猫の譲渡会のほかにはどんなイベントを実施されているのでしょうか?
茂木 これまでに、ドッグアロマ講座、ドッグヨガ講座、ホームケアやグルーミングを学ぶ体験会、獣医師による健康寿命を延ばすためのセミナーや愛犬愛猫の性格を知るワークショップなどを開催しました。先日は「もっと愛犬愛猫の性格を知ろう」ワークショップを行い、飼い主さんたちの悩みを聞いてどう解決に導くかというお話をさせていただきました。無駄吠えが止まらないとか、トイレの失敗が多いといった悩みは皆さん抱えていらっしゃいます。どんな接し方をすれば良いのか、ちょっとしたテクニックなどもお伝えしています。私たちが大切にしたいのは、飼い主さんもペットも、幸せでいることです。
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「恵比寿南一公園」は、Thinking Cap #4「自由な発想で遊び、感性や創造力を育む場づくりを目指して」で紹介した公園です。プレーパークでは子どもたちがどろんこまみれになって遊んでいて、カフェでは犬を連れてのんびりとおしゃべりを楽しむ大人たちの姿があり、とても笑顔にあふれた場所。そんな場所を見守るように、みんなが「健康長寿で恵比寿顔」になれるようにとペットのワンダーランドを目指して日々、動物たちと向き合っている「evergreen pet & cafe restaurant」。人間と動物との幸福な共生方法や、行動学に基づいたペットのトレーニング方法など、たくさんの学びと気づきを与えてくれるこの場所は、恵比寿のまちの人々にとっても心の拠り所になっているようです。後編では、茂木先生が獣医を志したきっかけや動物行動学との出会いなどを伺います。
✳︎後編は8月15日(火)公開予定です。
evergreen pet & cafe restaurant EBISU
東京都渋谷区恵比寿南1-26-1 恵比寿南一公園内 1F/2F
Cafe 11:30〜17:00(eat in LO. 16:30 )dinner 18:00〜21:00 ( LO. 20:30 pm )
evergreen pet :0120-299-112(フリーダイヤル)
evergreen cafe restaurant EBISU :03-5724-3660
https://evergreen-pet.com/